第 37 話 シアル酸とは ~シアル酸を捕捉する

 第 34 回のコラムからシアル酸を紹介しています。今回も引き続き、シアル酸について始めようと思います。

 前回お話したように、糖タンパク質の糖鎖 (N/O-結合型) の非還元末端には、シアル酸が存在する場合があります。この糖鎖の端にあるシアル酸は、様々な生体反応に関与しています。そのため、生体反応に関与しているシアル酸含有糖鎖の結合しているタンパク質が何か、ということを知りたいケースが多々あります。今回はそのシアル酸を捕捉する手法(=シアル酸含有糖鎖の結合したタンパク質同定)について紹介します。

 第 35 話で、シアル酸には Neu5Ac、Neu5Gc、KDN などがあることをご説明しました。構造の違いは5 位の置換基で、その他の部分は共通の構造をしています。シアル酸の捕捉では 7 ~ 9 位の水酸基をターゲットとします。下図にシアル酸捕捉について概要を示します(DOI: 10.1002/anie.200702919)。

 

 過ヨウ素酸 (NaIO4;メタ過ヨウ素酸) はジオールの炭素間を切断し、アルデヒドを露出させることができる試薬です。短時間、低温下にて処理をすると、 7 位にアルデヒドを生成します。このアルデヒド基に対して、ヒドラジドなどの活性基を持つ微粒子を作用させると、シアル酸を含む糖鎖(糖ペプチド)を捕捉することができます。微粒子に捕捉された糖鎖(糖ペプチド)を任意のラベル化試薬を用いた交換反応で切り出すことで、ラベル化されたシアル酸含有糖ペプチドが得られます。そして、ラベル化糖ペプチドを MALDI、LC-MS でGlycoproteomics を実施することで、タンパク質の同定が可能となります。絵に書くと万能な方法に見えますが、過ヨウ素酸酸化を夾雑系である生体試料に対して実施するため、サンプルによっては完全な解析が困難な場合もあります。しかしながら、夾雑系から選択的に捕捉(Chemical Fishing)する技術は、非常に魅力的な方法ではあるのです。

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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析

 

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