~なぜ糖鎖~ 糖鎖の視点

[執筆:取締役 成地健太郎]

[Character design: K. Ohkubo]

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糖鎖とは

 糖鎖とは、その名の通り“糖”が“鎖”のように連なった物質のことを表します。糖には、グルコース、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、マンノサミン、N-アセチルマンノサミン、フコース、アラビノース、キシロース、ラムノース、リボース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、シアル酸、2ケト-3-デオキシマンノオクツロン酸、ヘプトースなど数多くの種類が存在します(図 1 に1例を記載)。これらの糖が鎖のように連なることで、糖鎖を形成します。糖は水酸基 (OH) を多数持ち、糖同士の結合位置、結合様式(αβ)の組み合わせから多種多様な構造を生み出すことが可能です。

図 1  色々な糖

我々人間をも含めたあらゆる生物種(図 2)が糖鎖を有し、生体内で重要な役割を果たしています。

図 2  糖鎖を持つ生物種

 自然界において、糖鎖は、遊離糖鎖、タンパク質に結合した糖タンパク質、脂質に結合した糖脂質として存在しています。そして、哺乳類などにおいて糖タンパク質は、アスパラギン側鎖に糖鎖が結合したN-結合型、セリンあるいはスレオニン側鎖に糖鎖が結合した O-結合型として存在します。また、糖脂質には、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質などがあります。

 木や植物は、細胞壁や植物繊維を構成するセルロース(グルコースβ1,4ポリマー)を、昆虫などの節足動物は外皮の主成分であるキチン(N-アセチルグルコサミンβ1,4ポリマー)を大量に有しています(図 3)。多糖であるセルロースやキチンは、強固な構造を形成する役割を果たしています。グラム陰性菌などの原核生物は、細胞外膜に多糖成分を有し(図 3)、外膜構造の維持だけでなく、免疫監視機構を潜り抜ける役割も果たしています。

図 3  細胞外膜糖鎖、セルロース、キチン

産業利用される糖鎖

 以上のように、糖鎖は、我々哺乳類から目に見えない微生物に至るまで、自然界のあらゆる場所に存在しています。糖鎖(糖)はその性質から、産業界においても幅広い分野で利用されています。図 4 に産業界で利用されている糖鎖(糖誘導体)の一例を示します。医薬品には、アミノグリコシド系抗菌薬であるストレプトマイシンやインフルエンザの薬であるリレンザ(ザナミビル)などがあります。食品関係では、テーブルビートに含まれる赤色配糖体色素ベタニン(E162)、シクロデキストリンがあります。シクロデキストリンは食品関連での利用以外にも、化成品(分析、消臭剤、etc)でも幅広く利用されています。寒天の主要成分でもあるアガロースは、食品だけでなく、分子生物学、生物化学の分野における分析部材として利用されています。

図 4  産業利用される糖鎖

タンパク質の糖鎖修飾

 ここからは糖タンパク質にフォーカスして、話を進めたいと思います。糖タンパク質は、DNAからRNA、タンパク質を経て、翻訳後修飾により作られます(図 5)。翻訳後修飾の一種である糖鎖修飾(N-結合型、O-結合型)は、分岐パターン、結合様式(α、β)によって、非常に複雑な構造多様性を生み出すことができます。生体内で重要な生体分子であるDNA、RNA、タンパク質は直線型ポリマー分子であり、その生合成はtemplate-drivenです。一方、糖鎖はセルロースやキチンのような直線型ポリマーだけでなく、N-結合型糖鎖、O-結合型糖鎖など分岐型分子も存在し、様々な糖転移酵素(+糖供与体)が協奏的に働くことで生み出されます(not template-driven)。この“不均一性”が糖鎖の生化学反応を制御していると言えます。

図 5  糖タンパク質が作られるまで

 タンパク質上の糖鎖はどのような役割を担っているのでしょうか?アミノ酸側鎖と糖鎖の構造を比較すると、糖鎖の方が圧倒的に大きい構造をしています。タンパク質の1アミノ酸を遺伝子工学的手法にて置換しただけでも、構造変化、生体機能の変化が生じることから、糖鎖修飾によって何らかの影響(構造、機能)が起こることが容易に推察されます。糖鎖の生体内での役割について列記すると、安定性の向上(高水溶性、耐分解 etc)、糖鎖生合成中のタンパク質品質管理、細胞間(タンパク質分子間)相互作用などがあります。応用例として、糖鎖修飾されたペプチドは、PEG修飾と同様に血中滞留(安定)性が上昇することが報告されています。また、抗体医薬品では特定の糖鎖がADCC活性上昇に寄与することが報告されています。近年医薬品トレンドのモダリティ、核酸医薬品においても、ターゲティングのために糖修飾が活用されています。

困難を伴う糖鎖研究

 糖鎖の合成、分析など、長きに渡り糖鎖科学研究が続けられていますが、糖鎖は未だに扱いが難しい物質として認識されています。DNA、RNA、タンパク質(ペプチド)は自動合成機が市販されており、誰でも比較的容易に望みの分子を手に入れることができます。一方、糖鎖合成はオールマイティな方法論が確立しておらず、未だに市販されるレベルでの自動合成機は存在しません。これは糖が結合しうる箇所(水酸基)、結合様式(α、β)が多様で、ターゲットごとに最適化が必要なことによります。また、化学合成、酵素合成で調製可能な(分子サイズを明確に規定した)糖鎖の長さは、オリゴ糖レベルが限界となっています。糖鎖合成においては、経験、知識を相当量有していないと、自由に分子デザインを組むことが難しいのが現状と言えます。
  糖鎖解析では、近年、各社から糖鎖解析のためのサンプル調製キットが市販されるに至っており、N-結合型糖鎖であれば容易に解析可能な環境が整いつつあります。O-結合型糖鎖、微生物由来糖鎖、未知糖鎖などは決まった解析方法は存在しません。標品などが存在しない未知の糖鎖解析が困難な理由としては、結合位置、結合様式の組み合わせが理論上多様であり、単糖組成、結合位置、結合様式、分子量をそれぞれ決める解析(単糖組成解析、NMR解析、質量分析)が必要となり、種々の解析法のサンプル調製、データ解析に精通していることが求められることによります。

 

弊社は糖鎖に関するあらゆる問題を解決いたします

 弊社では、熟練した技術と豊富な経験、知識を持った研究員による受託解析サービス合成サービスを実施しております。熟練した技術に基づく分析サンプル調製、HPLC質量分析NMR などの機器を駆使することで、種々の目的に応じた解析に対応しています。受託合成においては、蓄積した各種知見、ノウハウなどを駆使し様々なターゲットの合成実績がございます。まずはお気軽に御相談ください。ご予算に応じてベストなご提案をさせていただきます。

 

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