前々回のコラムから、新たな話題としてムチンを取り扱っています。前回のコラムでは 膜結合型ムチンである MUC1 について紹介しました。今回のコラムでは MUC4 について紹介します。
ムチンは、分泌型でも膜貫通(膜接着)型でも、タンデムリピート構造を有しています(第40話をご参照ください)。MUC4 は下記に示す 16 アミノ酸の繰り返し配列を有し、そこには6か所のO-結合型糖鎖付加部位(赤字下線)が存在します。MUC4 は正常(健常)な臓器でも発現します。一方、乳がん、卵巣がん、肺がんなどで発現するとき、正常状態と比較して過剰に発現する、あるいは発現が抑制され、各々の病態に影響を及ぼします。
MUC4 TSSASTGHATPLPVTD
MUC4 の全体構造を、下記に示します(doi: 10.1096/fj.07-9673rev)。
MUC4 には6か所の糖鎖修飾部位があると上記で説明しましたが、糖修飾によって MUC4 のバックボーンペプチドの立体構造がどのように変化するかが検証されています(doi: 10.1002/chem.201002754)。図中 (c) に示すように、10番目のスレオニン(9Ala-Thr-Pro11)に糖鎖修飾がなされると、糖鎖近傍の立体構造が収束していることが明らかになっています。このような糖鎖修飾依存的な立体構造変化は他分子との相互作用に影響を及ぼし、結果として病態にも影響を及ぼしていると考えられます。
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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析