第 40 話 ムチン ~序論

 今回のコラムから、新たな話題として『ムチン』について紹介します。

 

 ムチン (mucin) は、語源である mucus からもわかるように粘液性を有しており、消化管や気道などの粘膜に分泌されています。そのアミノ酸配列は、タンデムリピート(一定のアミノ酸配列の繰り返し)構造を形成しており、セリン、スレオニン、プロリンを多く含んでいます。ムチンは、そのアミノ酸配列中のセリン、スレオニンに GalNAc (N-アセチルガラクトサミン) を起点とした O-結合型糖鎖が多数付加されている、極めてユニークな構造を持つ糖タンパク質です。

 

下記は、ムチンのタンデムリピートアミノ酸配列の一例です。

MUC1                      HGVTSAPDTRPAPGSTAPPA

MUC2                      PTPTPTGTQTPTTTPITTTTTVT

MUC3                      PSFTSSITTTETTSHST

MUC4                      GHATPLPVTDTSSAST

MUC5AC                  TSTTSAPT

MUC5B                    AHTLTVLTTTATTPTATGSTATPSSTPGT

これらのアミノ酸配列は、アミノ酸分析やプロテオミクス解析で決定されたものではなく、塩基配列から決定されています。高分子であること、アミノ酸配列が一定配列の繰り返しであること、多数のO-結合型糖鎖修飾を受けていること、これらがタンパク質からのアミノ酸配列決定を難しくしています。

 ムチンは、その存在場所から分泌型と膜結合型に分類されます。分泌型ムチンには、MUC2、MUC5AC、MUC5B、MUC6、MUC7が、膜結合型ムチンには、MUC1、MUC3、MUC4、MUC12、MUC13、MUC16、MUC17 があります (Nature Reviews Cancer. 2004, 4, 45-60. doi: 10.1038/nrc1251)。

 次回からはムチンと疾患(がん)との関りについて、糖鎖との観点から紹介したいと思います。

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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析

 

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