これまで、細菌の糖鎖について第 15、16、17、18、19 話に亘って紹介してきました。今回のコラムでは、ユニークな糖鎖を持つグラム陽性菌についてご紹介しようと思います。
前回のコラムでは、グラム陽性菌はグラム陰性菌が持つLPS (Lipopolysaccharide)、LOS (Lipooligosaccharide) のような糖鎖を持たない、とお話しました。グラム陽性菌はグラム染色で染まる厚いペプチドグリカン層を持ち、一般的には莢膜多糖を持ちません。しかしながら例外も存在し、Mycobacterium tuberculosis はその表面に非常にユニークな糖鎖を持ちます。Mycobacterium tuberculosisとは、「tuberculosis = 結核」を引き起こすという意味であり、つまりヒト結核菌のことです。幼少期のBCG ワクチン接種(BCG:ウシ型結核菌から培養、作製されたもの)、多剤耐性結核菌のニュースなどでご存知の方も多いのではないでしょうか。
Mycobacterium tuberculosisの菌体表面模式図を下記に示します。Mycobacterium tuberculosisは、他のグラム陽性菌と異なり、ペリプラズム層が存在し、LAM、アラビノガラクタンと言われる糖鎖(多糖)が存在しています。そして、ミコール酸と呼ばれる脂質の外側にはトレハロースが部分的に存在しています。LAM(LipoArabinoMannan) は、脂質からアラビノース、マンノースが連なった巨大分子であり、また、アラビノガラクタンは、アラビノースとガラクトースが連なった多糖構造を形成しています。
以上のように、結核菌はグラム陽性菌という分類であるものの、グラム陰性菌と同様、非常にユニークな糖鎖構造を菌体表面に有しているのです。
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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析