第 13 話 糖鎖、複合糖質の自動合成 ~酵素法を基盤とした自動合成(1)

 前々回のコラムから数回にわたり「糖鎖の自動合成」について取り扱っています。今回のコラムでは、酵素法を技術基盤とした糖鎖自動合成装置を紹介します。第 9 回コラムでもご紹介した糖転移酵素、糖加水分解酵素を利用した自動合成法になります。  糖転移酵素や糖加水分解酵素は、水溶液中、温和な条件下で、立体選択的、構造(配列)特異的に反応を進行させることができます。特に糖転移酵素を使用した糖鎖の構築では、化学合成法では制御が困難であったグリコシド結合の立体選択性を完璧に制御することができます。このような点から、糖鎖を作るための自動合成技術基盤としては、酵素法の方が化学法より優れていると言えるかもしれません(酵素法では、基質特異性から合成できない酵素が作用しない構造があることはマイナス要素ですが)。  自動合成において酵素法で糖鎖を合成すること自体は問題が無さそうですが、問題が起きる工程があります。それは精製の工程です。反応後には、使用した酵素を除去する必要があり、糖供与体も除去しなければなりません。通常の手動合成では、ゲルろ過カラムやイオン交換カラム、ODS系のカラムなどで精製すれば問題ないのですが、自動合成では簡易かつ効果的に精製する必要があります(溶液のボリュームを増やさずに)。簡易かつ効果的に精製する方法として、限外ろ過膜の使用が適しています。限外ろ過膜とは、特定の分子量、サイズのみを通過させる小孔がある膜で、大きい分子を膜内に残し、小さい分子を膜外に出すことが可能です。糖転移酵素による酵素反応に関わる要素を分子量の点から見てみると、酵素が一番大きく、基質(糖鎖誘導体)と糖供与体は酵素よりも小さい分子となります。そのため、このままでは限外ろ過膜の内側には酵素が残ってしまうことになります。限外ろ過膜に基質(糖鎖誘導体)を残し、糖転移酵素を除去あるいは“無いもの”として扱えるのであれば、酵素法による自動合成装置が可能になると言えます。これらの点をうまく利用した自動合成装置が北海道大学から発表されています。  次回のコラムではこの自動合成装置について詳しく紹介したいと思います。

 

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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析

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