第 43 話 糖、糖鎖を含む薬 ~グリコペプチド系抗菌薬

 今回のコラムから、新たなシリーズとして「糖や糖鎖を含む薬」を取り上げていこうと思います。第一弾は、抗生物質であるグリコペプチド系抗菌薬を紹介します。

 抗菌薬は天然抗菌薬と合成抗菌薬に大別され、グリコペプチド系抗菌薬は天然抗菌薬に属します。天然抗菌薬にはグリコペプチド系以外にもβ-ラクタム系、アミノグリコシド系、クロラムフェニコール系などがあります。また、グリコペプチド系以外にも糖を含む抗菌薬があります。グリコペプチド系抗菌薬には天然物に由来する Vancomycin、Teicoplanin と半合成品であるTelavancinがあります。

 Vancomycin (「vanquish」が語源) は、 1953 年に ボルネオ島の土壌中に生息する Amycolatopsis orientalis から単離され、Eli Lilly 社によって上市されています。Vancomycin には、真正細菌の細胞壁合成酵素の基質である D-Ala-D-Ala (Lipid II の末端) に結合して細胞壁合成酵素を阻害し、菌の増殖を阻止する働きがあります。また、グラム陽性菌に対して、殺菌作用を持っています。  Teicoplanin は、Lipoglycopeptide antibiotic (LGPA) であり、1970年代初めにインドのニモディ村で採取された土壌中に生息する Actinoplanes teichomyceticus から単離され、1980年代中頃に上市されています。

 Vancomycin、Teicoplanin は下記に示す構造 (doi: 10.1038/ja.2013.117) となります。

 Vancomycin の糖鎖部分は、L-Vancosamine が Glucose の 2 位に結合した 2 糖からなります。Teicoplanin は、GlcNAc、Man、脂質修飾された Glucosamineの単糖で修飾されています。Vancomycin と Teicoplanin は、下記赤色表記で示すように 7 アミノ酸からなるユニークな構造(Vancomycin骨格を例に)をとっています。

この 7 アミノ酸構造を基本骨格として、各官能基の修飾パターンによってVancomycin型、Teicoplanin 型に分類することができます。

Vancomycin 型には Telavancin、Balhimycin、Pekiskomycin などが属し、Telavancin は下記の構造になります。

 

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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析

 

 

 

 

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