第 33 話 糖転移酵素の繰り返し利用  ~膜接着配列を介した酵素固定化

 前回のコラムでは、Helicobacter pylori α1,3-FucT に元々存在する C 末端膜接着配列を介した酵素固定化法について紹介しました。この方法は、FucT の活性部位に影響がない領域を固定化に使用しており、また、微粒子の外側に向かって配向を制御しているため、高活性を有した状態を保つことが可能となっています。今回のコラムでは、この膜接着配列を他の糖転移酵素に導入し、固定化酵素を調製する方法を紹介します。

 第 30 話で紹介したSortase (Srt) を利用した固定化法です。SrtA はグラム陰性菌などが持つ酵素で、細胞表面タンパク質のC 末端に存在する配列を認識し、表面タンパク質を移し替える役割があります。Staphylococcus aureus 由来SrtA は、タンパク質 C 末端のアミノ酸配列 LPXTG (X = any) を認識し、ペプチドグリカンのアミノ基に転移させることができます(下図)。

 

 

 この SrtA を使用して、FucT 由来の膜接着配列を、糖転移酵素の C 末端に導入します。SrtA が認識する配列 LPETG を C末端に持つ酵素を組換え体として調製し、同じく SrtA が認識するトリグリシンを N 末端に持つ膜接着配列ペプチドを固相合成により調製します。これら2基質を SrtA 存在下で反応させると 、C 末端に膜接着配列を持つ糖転移酵素の創出が可能となります(下図)。

 上記の方法によって調製したガラクトース転移酵素(β1,4-GalT)を 糖供与体 UDP-Gal 存在下、GlcNAc に作用させると、ガラクトースが転移したラクトサミン構造を形成させることができます(下図)。以上の方法は、C末端を修飾しても活性に影響の無い糖転移酵素であれば、適用が可能です。C 末端にLPETG-His6が挿入されるベクターを構築しておけば、上流に目的糖転移酵素の遺伝子を挿入するだけで、容易に固定化用糖転移酵素の調製を可能にします。

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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析

 

 

 

 

 

 

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