第 30 話 糖転移酵素の繰り返し利用  ~酵素反応を利用した固定化酵素

 数回にわたり、糖転移酵素の繰り返し利用について紹介してきました。糖転移酵素を樹脂等に固定化する際、結合様式は「固相樹脂に共有or非共有結合」に大別されます。前回は、「共有結合」の代表格である化学法による固定化酵素について、紹介をしました。今回のコラムでは、酵素を利用した「共有結合」による酵素固定化法について、話を進めていきます。
 酵素の活性を維持した状態で樹脂等に固定化する場合、酵素活性に関与しない部位を、樹脂に固定化する必要があります。前回紹介した化学法では、酵素の部位特異的な修飾はできず、高活性を持つ固定化酵素を創り出すことが困難です。高活性を維持した固定化酵素を作製するためには、活性に影響のない部位を介して、樹脂上に配向を制御した形で固定化することが求められます。
 Sortase (Srt) はグラム陰性菌などが持つ酵素で、細胞表面タンパク質のC 末端に存在する配列を認識し、表面タンパク質を移し替える役割があります。Staphylococcus aureus 由来 SrtA は、タンパク質 C 末端のアミノ酸配列 LPXTG (X = any) を認識し、ペプチドグリカンのアミノ基に転移させることができます(下図)。

 伊藤らは、Biochemistry (DOI: 10.1021/bi100094g) にて SrtA を利用した酵素固定化法を報告しています。SrtA はユニークな基質特性を有しており、アルキルアミンのようなアミノ酸ではない化学種に対しても転移させることができます。この性質を活用し、セファロースレジン上に human β1,4-Galactosyltransferase (GalT)、Helicobacter pylori α1,3-Fucosyltransferase (FucT) を固定化しました(下図)。

この方法において、糖転移酵素の活性に影響のない C 末端配列を介して樹脂に固定化、すなわち配向制御した状態での固定化を達成しています。上記の固定化酵素を利用して、GlcNAc から LewisX 糖鎖合成に成功すると同時に、活性を維持した状態で繰り返し利用可能であることを実証しています。

 

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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析

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