第 29 話 糖転移酵素の繰り返し利用  ~化学的に調製する固定化酵素

 前回のコラムから、糖転移酵素の繰り返し利用について紹介を始めました。繰り返し利用するためには、酵素を何らかの方法で樹脂等に固定化する必要があります。その固定化の方法として、固相樹脂に共有or非共有結合で固定化させる方法、マトリックスに封入する(Entrapment)方法、架橋剤で酵素をクロスリンクさせる方法などがあります。今回のコラムでは、「固相樹脂に共有or非共有結合」に焦点を当てようと思います。まずは共有結合、すなわち化学的に調製する固定化酵素についてです。

 糖転移酵素を繰り返し利用(再利用)するには、複数回の反応に使用可能な活性を維持することはもちろんのこと、反応系から容易に回収できることが求められます。反応系からの回収については、樹脂を使用することで可能となります(反応系は、液相―固相反応)。アミロース、金、磁性などの微粒子を酵素固体化担体として用いる場合は、限外ろ過などの方法で反応物(液相)と酵素(樹脂)を回収します。その中でも、磁性微粒子は磁石によって容易に回収できるため、操作しやすいというメリットがあります。高分子の液体ポリマーへの酵素固定化(反応は液液)は、回収時に工程が増えるなどのデメリットが多いため、あまり選択されません。

 樹脂への化学的固定化法では、酵素=タンパク質なので、タンパク質で行われている固定化方法(e.g KLHコンジュゲートの調製、タンパク質への蛍光基導入)がそのまま使用されます。化学的に調製する際、タンパク質側で使用できる官能基としては、Lysの側鎖(NH2)、Glu の側鎖(COOH)、Cys の側鎖(SH)などがあります。

 

 活性エステルを使用する例を、下図に示します。タンパク質のLys 側鎖のアミノ基と、カルボン酸を活性エステル化した樹脂とを水溶液中混和するだけで、容易にコンジュゲート体を得ることができます。この反応は、タンパク質側の側鎖の修飾位置に関して特異性が無いため、ランダムに進行します。このことから、糖転移反応に関わるアミノ酸残基、あるいは近傍のアミノ酸残基へも修飾が生じるため、反応効率が落ちることが多々あります。反応効率が落ちても、ある程度の酵素活性維持が可能であれば、使用目的によっては選択肢としてありなのでは? と考えられます。

 

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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析

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