第3話 糖が鎖のように連なった物質「糖鎖」

 第2回のコラム「糖鎖を構成する糖」で、糖とはどんな物質なのかについて紹介しました。今回のコラムでは、「糖鎖」について紹介していこうと思います。糖鎖はその漢字の表す通り、糖が鎖のごとく連なった物質になります(図1)。図はグルコースがβ1→4結合で連なったセルロースを例に示しています。

図 1 糖鎖 ~ セルロースを例に

 糖が鎖状に繋がっていくことによって、様々な構造、機能を持つ「糖鎖」が構築されます。これらの糖鎖の構築には、糖転移酵素と言われる糖を転移する酵素が働いて糖をつなげていくわけですが、その詳細については別のコラムで紹介させていただきます。

 糖鎖は天然(生体)中でどのような環境に存在しているのでしょうか?糖鎖はタンパク質、脂質に結合した形、あるいは遊離の状態で存在します。タンパク質は生体膜に埋まった状態(膜貫通型タンパク)や抗体などのように血中に遊離の状態で存在している生体高分子で、糖鎖はそれらに結合していることになります(図 2)。

 タンパク質についた糖鎖は、タンパク質の物性に影響を与える(糖鎖は親水性分子)だけでなく、タンパク質の分解(プロテアーゼによる)を防いだり、細胞同士の接着など様々な生命現象に深く関与しています。また、小胞体では糖鎖によってタンパク質の品質管理がされており、糖鎖は生体中では必須の生体高分子と言えます。近年医薬品の売り上げ上位を占める抗体医薬品においても、糖鎖はその生物活性に影響を与えています。抗体に結合した糖鎖の構造によってADCC (Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity: 抗体依存性細胞障害)、CDC (Complement Dependent Cytotoxicity: 補体依存性細胞障害) 活性が変動することがすでにわかっています。代表的な例として、協和発酵キリン株式会社のポテリジェント技術は、抗体に結合した糖鎖を制御することによってADCC活性の増強をはかっています。

 脂質は2重膜を形成することで生体膜を作り出し、糖鎖はその脂質に結合した糖脂質として、生体膜表面に提示された状態になります(図 2)。糖脂質はラフトと呼ばれる生体膜マイクロドメインを構成する分子の一つであり、生体膜の微小環境をコントロールする上で重要な役割を果たしています。

 遊離の糖鎖としては、ヒアルロン酸などが知られています。ヒアルロン酸はグリコサミノグリカンの1種で、グリコサミノグリカンに分類される糖鎖の中で唯一タンパク質へ結合していません。細胞外マトリックスの主要成分として機能しています。

図 2 生体中に存在する糖鎖

 弊社ではタンパク質や脂質に結合した糖鎖、あるいは遊離糖鎖(多糖)を解析するサービスを提供しています。弊社の提供している「タンパク質品質管理」、「質量分析装置を用いた糖鎖解析」、「NMRを用いた糖鎖解析」サービスでお客様の試料中に含まれる糖鎖構造について、糖鎖プロファイル、内部標準を基準とした糖鎖定量解析、詳細な糖鎖構造(結合位置、結合様式)など臨機応変に対応いたしております。
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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析

 

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