細菌の糖鎖について、第15話序論から始まり、第 16~18 話ではグラム陰性菌について紹介しました。今回のコラムではグラム陽性菌について紹介します。
いきなりですがグラム陽性菌は、グラム陰性菌で見られるような糖“鎖”を持っていません。グラム陽性菌の菌体表面の構造概略図を図 1 に示します。その構造は、大きく分けて細胞内膜、ペプチドグリカン層から構成されています。グラム陽性菌では、グラム陰性菌と比較すると外膜を持たず、非常に厚いペプチドグリカン層を有しています。第 16 話のコラムでもふれましたが、グラム陽性菌はその名称通りグラム染色に良く染まる(=染色剤のクリスタルバイオレットが残存する)ことからその名がついています。
図 1
ぺプチドグリカンとは下記の図 2 に示す、GlcNAc (N-アセチルグルコサミン) と MurNAc (N-アセチルムラミン酸) の 2 糖繰り返し構造と 4 ~ 5 残基からなるペプチド、そのペプチド中 Lys 側鎖に結合したペンタグリシン (Gly5)が次のユニットと架橋することで巨大な構造を形成しています。
図 2
グラム陽性菌には、Streptococcus 属、Clostridium 属、Bacillus 属などの細菌の属が含まれ、重篤な疾患を引き起こす菌も知られています。今回のコラムの初めに、グラム陽性菌はグラム陰性菌のような糖鎖を持たないと言いましたが、グラム陽性菌の中でも一部ユニークな糖鎖を持つものがあります。次回コラムでは、ユニークな糖鎖を持つグラム陽性菌について紹介したいと思います。
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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析