数回にわたりグラム陰性菌を扱っていますが、今回のコラムでは視点を変えて酵素源としてグラム陰性菌を見ていきたいと思います。
下記図 1 に以前のコラムでも紹介した Neisseria gonorrhoeae の LPS コア糖鎖を示します。
図 1 Neisseria gonorrhoeae の LPS 構造
この糖鎖中には哺乳類の糖鎖でも存在する構造が含まれています。下記図 2 にその構造を記載した図を示します。ガラクトース (Gal)がグルコース (Glc) にβ1, 4結合した Lactose、Gal が N-アセチルグルコサミン (GlcNAc)にβ1,4 結合した Lactosamine という糖鎖構造があります。これらの糖鎖は、β1,4-GlcT (Glucosaminiyltransferase)、β1,3-GlcNAcT (N-acetylglucosaminyltransferase)、β1,4-GalT (Galactosyltransferase) という糖転移酵素によって生合成されています。
図 2 Neisseria gonorrhoeae の LPS 構造中の糖鎖
糖鎖を有機化学法にて調製する場合、グリコシル化の際の収率、とりわけ立体選択性の制御が非常に重要な課題となります。糖転移酵素はその名の通り酵素なので、決められた基質に対して、位置選択的かつ立体選択的に糖を転移することが可能です。糖転移酵素のユニット、糖供与体(UDP-Gal、UDP-GlcNAc、etc)の濃度を適正な条件に設定することで、ほぼ定量的にプロダクトを得ることができます。また、微生物(グラム陰性菌)由来の糖転移酵素は、同じ種である大腸菌を宿主として、高発現させることができるため、モノ取り用に相応し量を安価に調製できるメリットがあります。このような糖転移酵素を利用することで、図 3 のような複雑な糖鎖も合成することが可能となっています。
図 3 糖転移酵素を利用した Lactosamine リピートの伸長
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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析