質量分析装置を使用した糖鎖解析の事例紹介
近年、バイオ医薬品とりわけ抗体医薬品開発が盛んに行われています。抗体のFc領域にはN-結合型糖鎖が結合していて、ADCC、CDC活性に影響を与えております。医薬品の品質管理の観点からも、どのような糖鎖がどの程度存在しているかを明らかにする必要があります。
sample | ヒト血清由来 IgG,50 µg |
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質量分析装置 | AB SCIEX TOF/TOF™ 5800 システム |
マトリックス | DHB-Na |
ラベル化剤 | BOA |
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NMRを使用した解析の事例紹介
複雑な糖鎖構造を有するO-結合型糖アミノ酸の完全帰属
O-結合型に分類される糖鎖で、ラクトサミン (Galβ1-4GlcNAc) が伸長され、GlcNAc 部分がフコシル化された複雑な糖鎖構造を有する糖アミノ酸を解析いたしました。8糖あるいは、11糖から成る化合物を完全帰属することに成功いたしました。
sample | O-結合型糖鎖がセリン(6a or 7a)、あるいはトレオニン(6b or 7b)に結合した糖アミノ酸 |
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重溶媒 | D2O |
装置 | Bruker AVANCE DRX 600, equipped with a cryoprobe pulse sequences: DQF-COSY, TOCSY, HSQC, HSQC-TOCSY, HMBC Fourier Transform: NMRpipe (J. Biomol. NMR 1995, 6, 277-293.) Analysis: SPARKY (http://www.cgl.ucsf.edu/home/sparky) Ref: Naruchi, K., Nishimura, S. –I. Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 1328-1331. |
上記各種2次元NMRデータを解析、比較することで1H、13Cの化学シフトをアサインいたしました。下記に、化合物 7b の HSQC 帰属データをお示しいたします。
以下 Table 1, 2 に、化合物 7b の完全帰属した化学シフトデータをお示しいたします。
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糖鎖合成の事例紹介
N-結合型糖鎖の合成
天然物 Locust Bean Gum を原料として得られる マンノース2糖を利用することで、2、3 あるいは 4 分岐からなるN-結型糖鎖を合成いたしました。また、これらN-結合型糖鎖は糖ペプチド合成への応用が可能であることもわかりました。
Ref | Ravi Kumar, H. V., Naruchi, K., Miyoshi, R., Hinou, H., Nishimura, S. –I. Org. Lett. 2013, 15, 6278-6281. |
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N-結合型糖鎖の合成
N-結合型糖ペプチド合成