今回のコラムから、新たな話題として『ムチン』について紹介します。
ムチン (mucin) は、語源である mucus からもわかるように粘液性を有しており、消化管や気道などの粘膜に分泌されています。そのアミノ酸配列は、タンデムリピート(一定のアミノ酸配列の繰り返し)構造を形成しており、セリン、スレオニン、プロリンを多く含んでいます。ムチンは、そのアミノ酸配列中のセリン、スレオニンに GalNAc (N-アセチルガラクトサミン) を起点とした O-結合型糖鎖が多数付加されている、極めてユニークな構造を持つ糖タンパク質です。
下記は、ムチンのタンデムリピートアミノ酸配列の一例です。
MUC1 HGVTSAPDTRPAPGSTAPPA
MUC2 PTPTPTGTQTPTTTPITTTTTVT
MUC3 PSFTSSITTTETTSHST
MUC4 GHATPLPVTDTSSAST
MUC5AC TSTTSAPT
MUC5B AHTLTVLTTTATTPTATGSTATPSSTPGT
これらのアミノ酸配列は、アミノ酸分析やプロテオミクス解析で決定されたものではなく、塩基配列から決定されています。高分子であること、アミノ酸配列が一定配列の繰り返しであること、多数のO-結合型糖鎖修飾を受けていること、これらがタンパク質からのアミノ酸配列決定を難しくしています。
ムチンは、その存在場所から分泌型と膜結合型に分類されます。分泌型ムチンには、MUC2、MUC5AC、MUC5B、MUC6、MUC7が、膜結合型ムチンには、MUC1、MUC3、MUC4、MUC12、MUC13、MUC16、MUC17 があります (Nature Reviews Cancer. 2004, 4, 45-60. doi: 10.1038/nrc1251)。
次回からはムチンと疾患(がん)との関りについて、糖鎖との観点から紹介したいと思います。
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筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析