「糖」と言われて最初に浮かぶものは飲食物に加える砂糖(スクロース)が一般的であると言えます。糖を対象にした研究においては、このような”甘い糖”だけではなく、”甘くない糖”が対象の場合があります。
糖はわれわれの生体内で栄養源として利用されるだけでなく、タンパク質、脂質、細胞、赤血球など様々な生体分子、小器官の表面に存在しています。それらの糖は糖が鎖状に連なった構造である「糖鎖」を形成し、分解酵素からの保護、生物活性付与、細胞間情報伝達、接着、血液型決定など、それぞれ重要な役割を果たしています。また、「糖鎖」は高等動物だけでなく、昆虫、微生物、植物など幅広くその存在が確認されています。糖鎖という括りでは同じですが、実際に含まれている糖の構造(種類)は生物種固有のものがあります。
今日にいたるまで、このような糖鎖の構造、機能、合成に関する研究が精力的に実施されて来ました。しかしながら、糖鎖研究の分野では熟練した手技、経験が必要とされる職人的な要素があり、誰でも今すぐ始められる研究分野でないという現状があります。弊社では、糖鎖を分析する技術、合成する技術の両方を持ち合わせており、受託サービスと試薬販売を通じて糖鎖研究の発展に寄与していこうと日々精進しています。
本コラムでは、糖鎖の世界について様々な角度からご紹介いたします。
筆者プロフィール
naruken
博士(理学)北海道大学大学院理学研究科
専門:糖鎖工学、タンパク質工学、構造解析