抗SARS-Cov-2 スパイクタンパク抗体

 弊社は、今般の新型コロナウイルスの感染拡大が確認された2020年2月下旬から、ウイルス表面にあるスパイクタンパク質の「糖鎖結合領域」に着目し、当該分子に結合する抗体を取得することで、イムノクロマト法による簡易検査キットや治療薬へと繋げるべく、複数のプロジェクトを実施しております。当該開発プロジェクトにおいて、第一弾として策定した糖ペプチド抗原を使用した免疫の結果で得られたスパイクタンパク質に結合する抗体の一部につきまして販売を開始いたします。

強みを活かした抗体取得

 弊社が保有する糖ペプチド合成技術と抗糖タンパク質抗体取得技術を融合させることで、糖鎖領域に対する抗体取得に成功いたしました。取得した抗体は糖鎖とタンパクの両方を同時に認識する「抗糖タンパク質抗体」となります。不活化ウイルスや組換体タンパク質を免疫原とする一般的な抗体取得方法では、免疫原が大きく抗原となる部位が多く含まれるため、狙った部位に対する抗体取得が難しいだけでなく、変異する部位に対する抗体も取れてしまうという問題があります。この問題に対して、当社が用いた方法では、スパイクタンパク質における糖タンパク質の一部である糖ペプチドを免疫原としているため、狙った部位に対する効率のよい抗体取得が可能となります。なお、一般的には、糖ペプチド抗原を免疫原として取得した抗体は、本来の糖タンパク質に結合しない可能性が生じますが、当社は、独自の免疫法によって達成される極めて高い陽性率(多数の候補クローン)とスクリーニング方法を用いることでこの問題を解決しています。

スパイクタンパクに結合した糖鎖の役割

 

 スパイクタンパク質には多数の糖鎖が存在します。コロナウイルスはスパイクタンパク質にヒト糖鎖を模倣することで、ヒト免疫監視機構をくぐり抜けます。また、これらの糖鎖は抗原性のあるタンパク部分を糖鎖で防御する「Glycan Shield」としての役割があります(Watanabe, Y. D. et al, Science, 2020, 369, 330-333)。

変異ウイルスの出現

 2021年1月19日時点で、英国型は世界60ヵ国・地域で確認され、南アフリカ型は23ヵ国・地域で確認されています。今後もウイルスは変異を続けるため、既に上市されているPCR検査の感度低下やワクチンの効果低下が生じる可能性が想定されます。変異ウイルスが出現する限り、変異に応じた開発を進めなければならない状況になっています。

 変異ウイルスに結合しうる抗体は、変異の問題に影響を受けることなく迅速抗原検査キットや治療用抗体(中和抗体)への利用が期待されます。

変異ウイルスにも結合が期待されるユニバーサル抗体

 弊社の開発抗体は、変異が発生しにくい糖鎖領域をターゲットとしているため、今般出現している変異ウイルスにも結合することが期待されるうえ、糖鎖構造が異なっていても結合する「ユニバーサル抗体*としての可能性を有しています(*:弊社定義)。

第一弾販売抗体のターゲット領域と特性

 第一弾として販売する抗体は、スパイクタンパク質のS1のうち、下図赤色領域内(276~540残基)の一部分をエピトープ(詳細エピトープは非開示)として認識する抗体(IgG1)となっております。また、ELISA による評価の結果、免疫原として用いた糖ペプチドだけでなく、リコンビナントタンパク質であるS1にも結合することが明らかになっています。


 

抗体の販売、導出、共同開発について

 弊社は、いち早く実用開発を推進される企業様に対して、今回販売する抗体のみならず、今後取得予定である SARS-Cov-2 スパイクタンパク質に対して結合特性が異なるあるいは別糖鎖領域を認識する抗体を優先的に提供いたします。評価、導入をご希望される企業様に契約等柔軟に対応させていただきますので、下記よりお問い合わせください。

 

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